カスタマーサクセスの求人・転職する際に気を付けるべきこと
最近、「カスタマーサクセス」というキーワードを、様々なところで聞くようになりました。
「カスタマーサポート」なら昔からよく聞くし、イメージつきやすいけど、それとは違うの?
そんな方も多いと思います。
「カスタマーサクセス」という概念が生まれたのは、そもそも世の中のビジネスモデルの形態が変遷してきていることが背景にあります。
特に、「カスタマーサクセス」という職種が重宝されるのは、サブスクリプション型のビジネスモデルですが、
いま、BtoBにおいてもBtoCにおいても、この「サブスクリプション型ビジネス」がどんどん増えていっています。
BtoBのSaaSビジネスにおいては、先駆者であり、”SaaSの雄”とも言われるSalesforceという超有名な会社がありますが、彼らは、創業間もない2000年頃から、「カスタマーサクセス」という概念を提唱していました。
それが、直近になってその概念が広く知れ渡るようになって、実際、日本においても、2015年~2016年頃からカスタマーサクセスの求人が増え始めています。
この記事では、そんな「カスタマーサクセス」という仕事について、また、その仕事に就くにはどういったポイントを抑えるべきか、ということを解説していきます。
カスタマーサクセスとは?
まず、カスタマーサクセスとは何なのか、見ていきましょう。
どんな仕事か?
「カスタマーサクセス」は、日本語に訳すと「顧客の成功(の実現)」ということになります。
基本的には何らかのサービス/プロダクト(ソフトウェア等)を顧客に提供することになるため、カスタマーサクセスには以下のような仕事の要素が含まれます。
〇導入支援
まず、顧客との契約が開始すると、サービスを利用してもらうために、必要な導入支援を行う必要があります。
その導入支援を主体的に行うのがカスタマーサクセスが行う仕事となります。
例えば、高単価のプロダクトの場合であれば、顧客とキックオフのMtgを行い、その際にプロダクト利用方法の説明や、初期設定に必要なタスクの説明なども行います。
また、実際に利活用が進んだあとに、どのような成果を上げるのか、ということも初めに定義して、そこまでの進め方を提示してあげることも必要となります。
〇利活用支援
サービス/プロダクトの導入が終われば、顧客が主体的に利活用ができるよう支援を行います。
例えば、業界別に勝ちパターンが異なる場合であれば、顧客が属する業界の利活用事例を紹介することや、新たな取組みの提案も行ったりすることで、顧客が求めている成果を創出するためのサポートを行います。
〇アップセル/クロスセル
ある程度、サービス/プロダクトの利活用が進んでくると、さらに顧客が成果を出しやすくするために、他の関連サービスや、オプション機能なども提案しつつ、さらなる利活用促進を行います。
〇プロダクト改善
カスタマーサクセスの仕事は、「顧客を成功へ導く」ことが目的です。
したがって、目の前の顧客に対して様々なサポートや提案を行うことも勿論必要ですが、そもそものサービス/プロダクトの改善を図ることで、より顧客に提供できるかちの増大を図る必要があります。
極論ではありますが、これまで導入支援付きで1ヶ月かかっていた業務が、導入支援無しでも1週間で終わるような機能がプロダクトに加われば、自分たちも顧客もWin-Winですよね。
このように、日々顧客と一番近いところで接しているからこそわかる、自社のサービス/プロダクト課題を整理し、改善につなげることも重要な仕事の一つとなります。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、名前は似ていますが、それぞれの目的から、大きく異なります。実際に、どういった違いがあるのでしょうか?
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
目的 | 顧客の成功(の実現) | 顧客の不満解消 |
スタンス | 能動的 | 受動的 |
業務内容 | 顧客成功の定義 顧客の学習促進 アップセル/クロスセル |
顧客からの問合わせ対応 |
KPI | 売上・継続率 | 問合せ対応件数 |
〇目的:
カスタマーサクセスは「顧客の成功」を目的とするのに対し、カスタマーサポートにおいては、「顧客の不満解消」を目的と置くことがほとんどです。
〇スタンス:
カスタマーサクセスは顧客の成功を実現することが目的なので、そのために顧客起点ではなく、「能動的」に行動を起こし、顧客成功に導いていく必要があります。
逆にカスタマーサポートは、顧客の不満やクレームの解消を目的とするため、顧客起点でコミュニケーションが発生するため、「受動的」になります。
〇業務内容:
カスタマーサクセスは顧客成功の定義を行ったり、顧客の学習促進、なども積極的に行っていく必要があります。
また、必要に応じてアップセル・クロスセルなども行い、顧客への価値提供の幅を広げていくことも行います。勿論、顧客からの問い合わせ対応も行います。
一報、カスタマーサポートは、基本的には、顧客から受ける問い合わせの対応がメインの業務となります。
〇KGI/KPI:
カスタマーサクセスは「顧客の成功」の裏返しである「売上」や「サービス継続率」をKGI/KPIとして設定することがほとんどです。
カスタマーサポートは、いかに効率よく顧客の不満を解消できるか、ということが焦点となるため、「問い合わせ対応件数」や「1件当たりの問合せ対応時間」などがKGI/KPIにされることが多いです。
このように、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、目的の部分から大きく異なり、スタンスや業務内容、KGI/KPIにまで落としていくと、大きな違いがあることが分かります。
なぜカスタマーサクセスという仕事が出てきたのか
カスタマーサクセスという仕事が増えてきた背景には、「消費者行動の変遷」があります。
戦後の日本においては、消費者の消費行動が「高度経済成長期」、「バブル期」、「現在」の3つに大きく分けられます。
「高度経済成長期」においては、そもそも「モノを所有する」ということ自体が価値であり、「他の人と同じものを持つ」ということが社会的ステータスの一つとなっていました。
したがって、この時期には、世の中に提供される商品・サービスは「画一的」であり「大量生産」されるものが受け入れられました。
次に、「バブル期」ですが、この時期は「高くて良いもの(希少性が高いもの)を所有する」ということが社会的ステータスに位置づけられていました。
したがって、世の中に提供される商品・サービスは「多品種/少量生産」かつ「派手で個性的」なものが受け入れられました。
そして、「現在」ですが、良いものが簡単に手に入るようになり、「物質的欲求よりも精神的欲求の充足が求められる」ようになってきました。
そして、必要な分を必要な時だけ持ちたいという、考え方が主流になってきています。したがって、世の中に提供される商品・サービスは「精神的充足を満たす体験」であったり「金銭的ハードル(初期投資)が低い」ものが受け入れられるようになってきました。
こういった背景から、いわゆる「サブスクリプションモデル(定額制のサービス)」が生まれてきたわけです。
「サブスクリプションモデル」について語り始めると、何ページにもわたってしまうため、ここでは多くは延べませんが、「サブスクリプションモデル」の肝は、「顧客にサービス/プロダクトを使い続けてもらう」ということになります。
とにかく「継続して使ってもらう」ということが求められるのです。
それにより、サービス/プロダクトを提供する企業は、これまでは「売って終わり」であったところから、「使い続けてもらう」ために試行錯誤を行う必要が出てきたため、「カスタマーサクセス」という仕事の需要が高まり始めている、というわけなのです。
カスタマーサクセスにおいて必要な知識・スキル
カスタマーサクセスという仕事を行うにあたって、必要な知識やスキルについて紹介していきます。
必要な知識やスキル、というのは、言い換えると、あなたがカスタマーサクセスの仕事に就くことで身に着けられる知識やスキル、とも言いかえられます。
自社プロダクト/サービスの理解
自社プロダクト/サービスによって顧客を成功へ導くわけですから、勿論のこと、自社のプロダクト/サービスについては、誰よりも詳しくなる必要があります。
基本的な機能の理解から、細かい仕様面での理解。また、実際に利用する上でのケース別での対応方法等をインプットしておく必要があるでしょう。
ビジネスモデルの理解
先ほど、「カスタマーサクセス」=「顧客の成功(の実現)」であると書きました。
カスタマーサクセスを実現するためには、顧客よりも、顧客のビジネスについて理解し、顧客に対して提言を行う必要があります。
そのためには、根幹となる「ビジネスモデル」に関する理解は勿論のこと、その業界における知識も十分にインプットしておく必要があるでしょう。
顧客コミュニケーションのスキル
顧客を成功に導くにおいては、顧客との接点も最も多くなることが一般的です。
したがって、常に顧客が何を求めているのか、何をすれば価値に繋がり、何をすれば喜んでもらえるのか、ということを常に考え、コミュニケーションをとる必要があります。
これは、カスタマーサクセスに限った話ではありませんが、ビジネスマンとしては必須のスキルですね。
プロジェクトマネジメントのスキル
「顧客の成功」とは具体的に何なのか、いつまでにどうなっておく必要があるのか、ということも顧客とイメージをすり合わせる必要があります。
したがって「要件定義」を行うスキルも求められますし、その「要件」を実現するために、関係者を主体的に巻き込み、推進していいくことも求められます。
要は、一般的に言うところのプロジェクトマネジメントのスキルが求められます。
勿論、扱うサービス/プロダクトによって、細かい枝葉の部分で求められることは異なることもありますが、カスタマーサクセスにおいて上記のような要素は普遍的に求められます。
「少し難易度が高そうだな」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、よくよく考えてみてください。
ここに挙げた知識やスキルは、カスタマーサクセス以外の仕事にも十分に生かせるものが多く、いわゆる自分自身の市場価値を高める、というためには非常に有効です。
また、初めからこういった知識やスキルを持ち合わせている人材は市場においても少ないため、今であれば、まだまだ未経験であっても各企業において受け入れられる土壌があります。
※カスタマーサクセスという仕事について、より詳細に知りたいという方は「カスタマーサクセス」というタイトルそのままの本が出版されているので、一度読んでみてください。
体系的に整理されているので、より、理解が深まると思いますよ。
カスタマーサクセス職で自分に合った会社を見つけるには
ここまで、カスタマーサクセスという仕事の概要と求められる知識・スキルといったことを説明してきました。
では、実際に自分に合ったカスタマーサクセスの仕事を見つけるにはどうすればよいのか?というお話です。
結論としては、「転職エージェント」を使うことを強くお勧めします。
理由としてはシンプルで、エージェントが個別で持っている非公開の求人が多いということと、個別でお勧めの求人や会社を紹介してくれるからです。
カスタマーサクセスの仕事とはいっても、勿論ですが、その会社の文化や考え方、扱うサービス/プロダクトによって、その内容も異なってきます。
あなたの現時点の能力や、志向性にあった会社を間違いなく紹介してくれると思いますよ。
<おすすめの転職エージェント>
・リクルートエージェント
・マイナビエージェント
・DODA
また、こういったサービスには登録すると絶対に使わないといけない、とか、絶対に転職しないといけない、といったわけではありません。
すこし「カスタマーサクセス」という仕事が気になり始めた、とか将来的に転職も視野に入れている、という方でも全く問題ありません。
むしろ、どういった会社が募集していて、実際に採用時にはどういったことが求められるのか、ということを早期にキャッチアップしておくに越したことはないため、情報収集の一環としても、一度エージェントの方の話を聞いてみることをお勧めします。
カスタマーサクセスの仕事で転職をする際に気を付けるべきポイント
あなたが、もし「転職しよう」と考えているとしたら、カスタマーサクセスの仕事や会社を選ぶうえで、以下の点を確認しましょう。
プロダクト/サービス
プロダクトやサービスの内容によって、カスタマーサクセスの仕事の内容は異なります。
特に、そのプロダクト/サービスの「単価」によって左右されることが大きいです。
高単価のものであれば、ある程度人件費を避けるビジネスモデルであるため、カスタマーサクセスの仕事において顧客とリアルな接点を持つことが多くなる傾向にあります。
逆に低単価の者であれば、全ての顧客に時間を多く割くことは難しいため、どちらかというと初月だけの電話でのサポートと、サポートサイトの更新作業がメインとなったりもします。
体制・役割
会社の考え方やフェーズによって、カスタマーサクセス部門に求めあられる役割や体制が若干異なってきます。よくあるケースをいくつか挙げておきます。
〇新規営業との「一体型」
こちらは、新規営業で受注する業務と、そのあとのフォローアップの業務を一貫して「カスタマーサクセス」の部門が対応することになります。
1人が担う役割が広いため、その分、保有できる案件数は少なくなる傾向があります。
また、営業的な考え方が強いため、数字がいかないときは既存顧客のフォローアップよりも、新規営業に力を注ぐことになったりもしがちではあります。
〇受注後は全てカスタマーサクセスが対応する「独立型」
新規営業部隊が受注してくれた案件に対して、受注後のすべてのフォローアップ業務を「カスタマーサクセス」が行うパターンです。
「カスタマーサクセス」の部門にある程度裁量が与えられていることが多いため、顧客の満足度を向上することや、継続率を上げるための施策なども自分たちで定義し、試してみる、といったこともやりやすいかもしれません。
〇営業組織の下部に位置づけられる「サポート型」
営業的な考え方が強い、という意味では、先ほど述べた「(新規営業との)一体型」と似ていますが、違いは、「営業組織の下部に位置づけられている」という点です。
つまり、新規案件の受注は営業部隊がやってくれます。
また、既存案件からのアップセル/クロスセルについても、営業部隊がやってくれます。
「カスタマーサクセス」はあくまでそういった営業部隊が数字を上げるための下支えのフォローアップ部隊、といった位置づけに近いです。
〇サービス/プロダクト企画部門も配下に置く「統合するマネジメント型」
こちらは「独立型」に近くなりますが、違いは、「カスタマーサクセス」の部門の裁量の度合いです。
こちらは、配下にサービス/プロダクト企画部門を置いているため、「カスタマーサクセス」の業務の一環として、サービス/プロダクトの改善についても行いやすくなります。
これらの役割や体制の違いは、その会社の「カスタマーサクセス」の部門がどういったKGI/KPIを追っているのか、ということを質問してみると、明らかになることがほとんどです。
(KGI/KPIというものは、その組織の役割や責任範囲を定量的に言い換えたものなので)もし、面接などを受けられることがあれば、一度質問してみましょう。
組織風土・文化
勿論ではありますが、「カスタマーサクセス」という仕事も、その会社の組織風土や文化から色濃く影響を受けます。
これは「カスタマーサクセス」の仕事に限った話ではありませんが、自分と考え方や志向性のあった会社を選ぶようにしましょう。
さいごに
「カスタマーサクセス」という職種は、すでに需要が急激に高まり始めていますが、求職者側ではあまり認知されていないことが多いのも事実です。
先行者利益、ではないですが、今からカスタマーサクセスのポジションで力をつけることで、自らの市場価値を高め、どこからも求められる人材になれる可能性があります。
もし、「カスタマーサクセス」という仕事に興味がわき、実際にやってみたい、ということであれば、早めに検討してみることをお勧めします。