裁量労働制とはなに?転職する際に知っておきたいメリットとデメリット
裁量労働制とは、どのような意味があるかご存知でしょうか。転職する際に知っておきたい用語は色々とありますが、裁量労働制を導入している企業も近年増えていますので、今後自分の働くスタイルを考える際にも理解しておきたいことのひとつ。
そこで今回は、裁量労働制とは何か、基本的な仕組みやメリット・デメリットについて詳しくご解説していきましょう。
裁量労働制の概要について
裁量労働制とは何か、意味や詳しい内容についてご説明します。気になる企業が裁量労働制の導入を検討している場合、事前に知っておきたいことがいくつかあります。
裁量労働制とは
裁量労働制とは、会社から労働時間や時間の配分を指定されるのではなく、自分で決められる働く制度のことです。労働者は決められた出勤時間に出社して8時間働くという通常のルールはなく、自由に時間に縛られず働くことが特徴。
長時間働いても短時間働いても、労使協定で決められた時間は労働としてみなされ賃金が支払われます。一般的な働き方なら、始業時刻に到着しないと「遅刻」扱いになりますよね。裁量労働制とは、このような遅刻や早退という概念がないことが魅力といえるでしょう。
2つの種類がある裁量労働制
裁量労働制は大きく分けると「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2タイプがあります。専門業務型裁量労働制とは業務の性質上、労働者に裁量を委ねる仕事の場合のみ導入できるもの。
具体的に当てはまるものは、洋服や工業製品などのデザイン考案業務、情報処理システムのプログラム設計基本作業、放送番組や映画のディクレーやプロデューサーなどが対象になります。
弁護士や税理士、公認会計士の業務も専門業務型裁量労働制の対象になるでしょう。企画業務型裁量労働制は、専門業務型裁量労働制よりも厳しいルールが設けられ、企業の中核を担う企画立案などを行うホワイトカラー労働者が対象。
たとえば事情運営に関する事項についての仕事や、企画や調査の分析業務などを行う人。具体的な仕事としては、リサーチ業務や企業の経営ポジション、コンサルタントなどが当てはまります。
裁量労働制は誰が決めるのか?
時間拘束がない働き方に魅力を感じる人もいれば、いつも通り決まった時間で働きたい人もいるでしょう。そもそも裁量労働制とは導入するにあたり、会社と労働者で労使協定を結ぶことが必要な制度。
そのため会社側が一方的に労働者に裁量労働制を強制することはできません。企業側としてはこの制度を導入するにあたり、原則して所轄労働基準監督署長に届けが必要で、その際に対象になる業務内容、労働時間としてみなす時間、苦情が出た場合の措置方法などを届け出ること。協定の有効期間に決まりはありませんが、3年以内が好ましいとされています。
フレックスタイム制との違いは?
裁量労働制は、フレックスタイム制と勘違いしてしまう人もいるので、違いをわかりやすくご説明しましょう。フレックスタイムは会社がコアタイムを設定しているので、この間に始業と終業を自分で決める制度。
たとえばコアタイムが13~17時であれば、所定労働時間8時間の場合、13~17時の間勤務してトータルで8時間なら、朝9時からでも10時からでも条件を満たせばよいことになります。13時に勤務開始した場合は、22時まで就業する計算です。
限定的ではありますが、フレックスタイム制も裁量労働制のようにある程度勤務時間が選択できることは共通点です。違いはみなし労働時間があるかないか。
フレックス制度では、所定労働時間は毎日勤務する必要がありますので、その点は大きな違いになるでしょう。
メリットについて
裁量労働制とは、働く時間を柔軟に変えられる特徴がありますので、そのほうが働きやすい業務の人にとってはとても魅力的な制度です。メリットとしては、次のようなポイントが挙げられるでしょう。
拘束時間が短くなる
作業が少なくても会社に拘束される時間が決まっていると、とても不効率に感じませんか。その点裁量労働制なら、個人が時間を調整して所定労働時間よりも早く仕事を終わらせることが可能です。
勤務時間が短くても「早退」にはなりませんので、給与の減額を心配する必要もありません。拘束時間が変わることで、自分の仕事能力を高める意識にもつながりますので、効率的な作業が見込めるようになりますね。
プライベートの充実
勤務時間が固定されているほうがプライベートを計画しやすいという意見もありますが、自由度が高くなるとさらに幅広くプライベートを楽しめることがメリットです。
自分の好きな働き方ができる環境は、仕事のペースも作りやすくなるため、急な用事があっても柔軟に対処が可能。ライフスタイルに合った労働環境なので、満員電車を避けてのんびり朝を過ごしたい人にもよいでしょう。
プライベートと仕事のメリハリができることで、さらに仕事にもやりがいが感じられるようになります。
企業にとってのメリット
企業にとっては、みなし労働時間を用いる制度になるため、時間外労働の残業代が発生しないことは人件費の予測が立てやすいメリットがあります。
企業を運営する中でも人件費は大きな費用になりますので、総額をあらかじめ算定しておくと新規採用の計画も立てやすくなるでしょう。また給与支払いの算定はとても手間がかかり、個人ごとの時間外労働の管理、正確な計算など、月末になると作業に追われることを避けられるのはメリットになりますね。
基本的にみなし労働時間を固定給として処理するので、労務管理負担は軽減される可能性があります。
デメリットについて
裁量労働制とは、実際に働いてみないとわからないことも多いかもしれませんが、すでに導入されている企業からはデメリットの声も上がっています。転職の際に次のようなことも頭に入れて、裁量労働制の企業を判断してみましょう。
長時間労働になる
時間を短縮できる裁量労働制ですが、逆に長時間労働が蔓延するリスクもありますので、とくにクリエイティブな業務だと残業時間も長くなりがちです。
上手くスケジュール管理や時間配分ができない人だと苦戦する場合もあるでしょう。みなし労働時間を超えた部分に関しては残業代が出ないデメリットもあり、会社側も個人の裁量だと解釈してサポートしてくれない場合もあるかもしれません。
限られた業務が対象になる
裁量労働制とはどのような業務にも導入できる制度ではなく、労働基準法などで定められた特定業務に限られていることがデメリット。転職をきっかけに働くスタイルを変えたいと思っても、自分の希望する職種が対象でない可能性はあるのです。
休日出勤が増える
デメリットとして考えられるのは、場合によっては休日出勤が多くなる可能性。仕事が多い場合は、成果を出すために時間短縮できず、休日も出勤しなければならないことになるでしょう。
裁量労働制のほうが一般的な勤務スタイルよりも労働時間が多いという説もありますので、会社のルールや自己の時間管理は重要です。
企業にとってのデメリット
裁量労働制を導入するには複雑な手続きがあり、ルールをしっかり定めないと、労働者と雇い主の間でトラブルになることもあります。慣れるまではストレスを感じながら働くことになる可能性があるため、メンタルヘルスケアなども充実させる必要があるかもしれません。
まとめ
裁量労働制とはメリットとデメリットがありますが、すでに導入している企業や業務はたくさんあります。そんな働き方に魅力を感じる人は、まず対象になる業務スキルを身につけることもよいかもしれません。