扶養家族の認定条件はなにか?手続きする際に注意したいことや理解しておくべきポイント
扶養家族の条件は詳しく知らない人も多いようですが、年末調整の時期になるとふと疑問を抱く部分かもしれません。扶養家族が増えることで所得申告の際にメリットも考えられますので、今後手続きする際に理解しておきたい扶養家族の条件について徹底的にご解説していきましょう。
扶養家族とは何か?
扶養家族というものについてなんとなくしか理解していないという人のために、定義や扶養家族の条件について詳しくご説明していきましょう。
扶養という意味について
まずは扶養家族の「扶養」という言葉の意味からご説明します。扶養とは自分の力で生活することが難しい人が、家族や親族から援助を受けること。
扶養にする、扶養されるという表現をしますが、夫に扶養される妻、父親に扶養される子供という形が知られていますよね。
異なる定義があること
自分の力で生計が立てられない人を扶養家族にすると、人数の有無により課税所得の軽減や保険料が免除されるという仕組みがあります。日本においては、扶養家族がいる場合は負担を少しでも減らせるよう税制上でも考えられています。
その際に注意したいのは、扶養家族の条件は「所得税」と「「社会保険」の場合に異なること。所得税や住民税の計算をする際にも、定義の違いを理解しておくと計算が楽になるかもしれません。
所得税の扶養家族の条件について
扶養家族の条件でまず気になるのは、所得税の税制上でのポイント。扶養家族にできるかどうか迷った時は、次の条件を確認しておきましょう。
親族の範囲について
扶養家族はどこまでが「家族」として対象になるか、判断が難しいところですよね。税制上の扶養家族の条件になるのは、一家の大黒柱となる納税者の扶養控除の対象になる親族。
具体的には納税者から見て6親等内の血族と3親等内の姻族となっています。血族は血縁関係のある人のこと、姻族とは婚姻して3親等内になった親戚までのこと。
一番離れた関係になるのは、6親等の従兄弟の孫になります。姻族なら配偶者の兄弟の子供までが扶養家族の条件を満たすことになるでしょう。
対象年齢について
扶養家族の条件は年齢も関係していますので、所得税の計算上、対象年12月31日時点での年齢を判断してください。扶養家族にできるのは16歳以上の親族のみ。
税制改正により年齢が引き上げられ、16歳以上となり上限はありません。16歳以下には児童手当が支給されるために扶養家族の対象から外されています。
生計をひとつにしているか
扶養家族の条件として、納税者と原則「同居」していることが必要です。学生の子供なら親元を離れて学校の寮で生活している、別居している高齢の両親がいる場合は、どちらも仕送りしていることが証明できれば「納税者と生計を一にしている」と認められ、扶養家族にすることができます。
収入基準について
扶養家族の条件は血縁関係だけでなく収入も判断対象になりますので、収入が多い親族は対象外になる恐れもあります。たとえば配偶者。税制上の控除があり年間所得48万円以下で給与のみの場合は、給与収入が103万円以下と決められています。
子供のアルバイト代も注意が必要で、扶養範囲内の年収にしないと対象外になります。両親を扶養家族にする場合は、年金受給者なら所得として計上されますので、年金収入額から控除額を引いた金額が所得に。
また高齢者の場合は、年齢によって非課税分が変わり、65歳未満は108万円、65歳以上は公的年金の非課税枠が増えるため158万円となります。
社会保険の扶養家族の条件について
扶養家族の条件は、社会保険の扶養家族になると税制上とは大きく異なる条件がありますので、申告の際には注意するようにしましょう。
親族の範囲について
全国健康保険協会では、社会保険の扶養家族の条件として「配偶者」と三親等内の「子、孫及び兄弟姉妹」「直系尊属」と定めています。
この中で配偶者に当たるのは、民法上婚姻関係がなく同居している事実婚も含まれることが所得税との違い。直径専属は納税者と直接つながる親族で、養父や養母は含まれません。
姪っ子や祖父母などの3親等以内の親族も、同居していれば扶養家族にすることは可能です。
収入条件について
社会保険の扶養家族にするには、年間収入が「130万円未満」であることが条件です。60歳以上もしくは障碍者なら年間収入は180万円未満までが対象。
収入は金額だけでなく被保険者に生計を維持されていること、さらに被保険者の収入で生計を維持されていることが条件です。たとえば130万円未満の収入で生計をやりくりできる親族は、扶養家族にはならないということ。
その場合の判断基準は、同居人なら収入が被保険者の収入の半分以下であるか。同居してない場合は、被保険者の仕送りよりも少ない収入か。このような判断基準も満たす必要があるので注意が必要です。
扶養家族を増やすメリット
扶養家族が増えると、納税者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
税の控除が受けられる
扶養家族が増えると、所得税と住民税の控除を受けることが可能になります。とくに高齢の親を扶養している場合は「扶養控除」の対象になり、年齢や人数によって控除額が異なります。
たとえば別居している70歳以上の親は所得税控除額48万円、住民税控除額は38万円、同居の70歳以上なら所得税控除額は58万円、住民控除額は45万円。
仮に税率が20%の納税者なら、別居の親を扶養家族にすると、節税額は所得税、住民税などを合計すると13万円近く安くなる計算です。
健康保険料が安くなる
扶養家族で親が子供の健康保険の扶養家族になると、親の健康保険料の負担がなくなります。扶養家族が増えても健康保険料は自分の給与によって決定されますので、保険料が高くなることはないでしょう。
ちなみに75歳以上の人は、後期高齢者医療制度に加入することになりますので注意が必要です。
扶養家族を増やすデメリット
親を扶養にするかどうか迷うことがよくありますが、血縁関係でもとても近い存在なので、税制上も社会保険上もあらゆる影響を考えることが必要です。
親を扶養にした場合は、次のようなデメリットも考えられるでしょう。
高額療養費との関係
高齢になると医療費の負担も増えてくることが想定されますが、親を扶養家族として増やした場合は、高額療養費制度との兼ね合いに注意が必要です。
健康保険は、1か月の間の医療費が自己負担額を超えた場合は払い戻ししてもらえる制度があります。この制度は被保険者の所得と年齢により決まりますので、被保険者の所得者が多いと自己負担額も比例して高く設定されることに。
親を扶養にした場合、子供が被保険者になりますので、親の所得のほうが多いと高額療養費の払い戻金が少なくなる可能性があるのです。
納税額について
親を扶養家族にした場合、年収によっては親本人が自分で所得申告して納税者でいるほうが、トータルの納税額が安くなる場合もありますので、扶養にする前に試算しておくと安心かもしれません。
人生100年時代を迎え、生涯現役で活躍されている高齢者の方もいますので、長い目で考えて扶養家族にするかどうか判断するとよいでしょう。
まとめ
扶養家族の条件が定められているのは、養う人の負担を少しでも軽減する目的があります。しかし年齢や人数など、納税者にとって必ずしもメリットになる場合だけではありませんので、慎重に判断したいところですね。
年末になると普段あまり気にしない所得申告。扶養家族の有無によっては大幅な節税効果が得られることもありますので、わからない時は税金の相談会などに参加してみるのもよいでしょう。